2010.01.27

版画研究会のレポート・その4

1月22日に行われた
第126回版画研究会のレポートを続けます。

続いて、「シルクアクアチント」という技法の説明です。

「アクアチント」というのは、
腐食液を使って版を作る銅版画技法の1つで、
パウダー状にした松ヤニをふりかけておくことで、
ぼかしやにじみなど、微妙な濃淡が表現でき、
水彩画のような淡い色が出せる技法です。

「シルクアクアチント」は、松ヤニではなくシルクを使います。

100122_hangak7
右にあるのが版です。

100122_hangak8 100122_hangak10_2
左の黒い板のようなものが、
版を作る前の状態です。

板にはシルクの布が貼ってあり、
そこに、右の画像のようなモデリングペースト(Acrylic Modeling Paste)で
絵を描きます。

ペーストが固まれば、上のような版が完成。
そこに色を乗せ、さらに、そこから
また色をぬぐったりする「マイナスの作業」をしながら
絵を仕上げていきます。

色をつけた版の上に紙を乗せ、プレス機にかければ
写真のような作品に!

これは版がありますが、あえて同じものは創らず、
一枚ずつ違う色で刷っているそうです。

100122_hangak5
右の2作品は同じ版からできたものですが
全く雰囲気が違います。

このような感じで、
小春さんが技法について説明した後は、
参加した人たちが作品や版の近くに行って
じっくりと観察したり、質問したりしていました。

これで、版画研究会のレポートは終わりです。

版画研究会に興味を持った方は、ぜひ
こちらのページで詳細をご確認ください!

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2010.01.26

版画研究会のレポート・その3

1月22日に行われた
第126回版画研究会のレポートを続けます。

100122_hangak9
(左:モノタイプ+チノコレ、右:モノタイプ)

次は、左のような作品に関する説明です。

左の作品には、「モノタイプ」の技法に
和紙を使った「チノコレ」という技法がプラスされています。

まずは、前回説明したような感じで
プラスチック板の上に絵を完成させます。
絵の上に、糊をつけた和紙を乗せて、
その上に湿らせた紙を乗せてプレス機にかけると、
左のような作品に仕上がります。

プレス機の圧がかなりあるので、
色を塗ったかのように、フラットに仕上がるそうです。
パッと見た感じでは、
和紙がくっついているようには見えません。

そこで、今回は特別に
和紙の部分が剥がれてきてしまった作品を
見せてくれました!

100122_hangak4
右の作品に注目。

100122_hangak2
横から見ると、和紙の部分が浮いています。

100122_hangak3
和紙をめくると、こんな感じです。

小春さんの講演は、まだまだ続きます!


版画研究会については、
こちらのページでご確認ください。

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2010.01.25

版画研究会のレポート・その2

1月22日に行われた
第126回版画研究会のレポートを続けます。

今回のテーマは「NY(ニューヨーク)のエコな版画技法」ということで、
まずは、小春さんの作品を語るときには外せない
「モノタイプ」についての説明から始まりました。

「モノタイプ」は、版画といっても1枚しか作れない技法。
透明なプラスチック板の表面にインクや絵の具などで直接描画し、
そこに紙をあててプレスすると、1枚だけの版画が出来上がります。

以前、伊勢丹でのギャラリートークでも話していましたが、
エッチングなどの版画と違い、
版を作るために薬品を使う必要がないので
体にも地球にも優しい、「エコな技法」です。

小春さんが創る「モノタイプ」の特徴は
「マイナスの作業」。
アメリカなどでは、油絵感覚で
インクをどんどん重ねていく
「プラスの作業」で創られる作品が圧倒的に多いそうです。

小春さんの場合は、プラスとマイナスのバランスが絶妙で
独特の世界観を創り上げています。

100122_hangak9
(左:モノタイプ+チノコレ、右:モノタイプ)

言葉ではうまく説明できないので、
右のような作品ができるまでの過程を、
絵にしてみました。

まず、ローラーを使って
上下の黒い部分を描きます。
Mono1

そして、カードボード(厚紙)などを使って
黒い部分からはインクを取り去るという「マイナス」の作業をし、
Mono2_3

白い部分にはインクを乗せていくという「プラス」の作業をしていきます。
Mono3_2
※この3枚は、小春さんの作品ではありません。
私が話の内容からイメージしたものです。
言葉より伝わるのでは・・・と思い、
入れてみました。


濃淡は、手の力加減で表現するそうです。

これらの作業をするときに筆は使わず、
額装するときに使うマット(作品を囲む厚手の紙)の切れ端、
ティッシュ、布、、スポンジ、手のひらなど、
身近にあるものを使っているそうなので、
「エコノミー」の意味でも、「エコな技法」といえますね。

板の上で作品を完成させた状態で
1発勝負で刷ります。
一度板の上に置いたインクは
すぐに乾いてしまうので、
1~2時間ぐらいの間に仕上げなければなりません。

白い部分を埋めるようにインクを重ねていくという
「プラスの作業」で作品を作る場合は、
インクを重ねることで失敗を修正していく方法もありますが、
インクの上で「マイナスの作業」をするということは、
失敗したらそこで終わりです。
黒い下地部分を手で触ってしまったり、
ちょっと引っ掻いてしまったら
すべてを消して、最初からやり直すことになるので、
書道のような緊張感があるそうです。

小春さんの場合は、下描きなどはせず
頭の中にあるイメージを直接表現していきます。
版画なので当然左右が逆になりますが、
創る途中では、左右が逆になることは意識しないそう。

小春さんの講演は、まだまだ続きます!

版画研究会については、
こちらのページでご確認ください。

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2010.01.24

版画研究会のレポート・その1

小春さんが講師を務めた
第126回版画研究会に参加してきました。

100122_hangak1

版画研究会」は、国立版画美術館の設立を希望し、
1989年に発足しました。
2ヶ月に1回行われる勉強会では、
アーティストや各分野の専門家を講師として招き、
版画に関する理解を深めます。
勉強会の要旨は、年1回発行される
会報(英訳併記)でも紹介されています。

会報は、国会図書館をはじめ、
横浜美術館、町田市立国際版画美術館、
墨田区文化振興財団、東京芸術大学(美術館、図書館、版画研究室)などに
収蔵されているとのこと。

詳細は版画研究会のHPに書かれていますので
版画に興味のある方は、
ぜひチェックしてみてください。
浮世絵が好きな方などにもオススメです!
版画研究会(会員募集中)

今回、小春さんが行った講演のテーマは、
「NY(ニューヨーク)のエコな版画技法」。

モノタイプがどのように作られるか、
シルクアクアチントやチノコレといった技法の特徴を
作品や版を見せながら説明してくれました。

100122_hangak6
版と作品を並べて見ることができるという、
とても貴重な機会でした。

興味深い話が多かったので
何回かにわけてお知らせしようと思っています。

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